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トップ > 特集 > プロジェクトマネジメントの世界標準PMBOKを活用したウェブディレクションがクリエイティブの世界を変える!第1回

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執筆者

ウェブエキスパート編集部
  • PMBOKでワンランク上のWebディレクションを目指す。をテーマに、ロフトワーク 林千晶、富士通 高橋氏による共著にて「Webプロジェクトマネジメント標準」が発刊された。発刊に寄せて、本書にかける思いや、制作秘話などをはじめ、本書の実践的な活用法をインタビュー形式で大公開します!

書籍データ

「どうしたらウェブディレクションの失敗を防げるのだろう?」「どうしたらもっと効率的にウェブ制作を進められるのだろう?」そして「どうしたらもっとハッピーエンドのプロジェクトを増やせるのだろう?」

私たちはそんなことを毎日のように考え続け、IBMのシステム構築におけるプロジェクトマネジメント手法などを研究しながら、必死に答えを探しました。この本でご紹介するPMBOK(ピンボック/A Guide to the Project Management Body of Knowledge)と出会ったのは、そんな暗中模索をしばらく続けてからのことでした。そんな日々のディレクションから得られる教訓・知識を、PMBOKに準えて体系的に解説しています。この本をベースとして、ウェブ・プロジェクトを楽しく、ハッピーに成功させる方法にチャレンジしていただければ、それに勝る喜びはありません。
(『Webプロジェクトマネジメント標準 はじめに』より抜粋)

「Webプロジェクトマネジメント標準」「Webプロジェクトマネジメント標準」

著者プロフィール

株式会社ロフトワーク 取締役 林 千晶
1994年に花王に入社。マーケティング部門に所属し、日用品・化粧品の商品開発、広告プロモーション、販売計画まで幅広く担当。1997年に退社し米国留学。大学院卒業後は共同通信NY支局に勤務、経済担当として米国IT企業や起業家とのネットワークを構築。2000年に帰国し、クリエイターコミュニティを主体とした新しいスタイルの制作代理店「ロフトワーク」を起業。2007年よりクリエイティブ・コモンズ・ジャパン アドバイザリー・ボードに就任。

富士通株式会社 高橋 宏祐
富士通株式会社にて、1998年からウェブマスターとして富士通のWeb戦略を企画・実行。2002年、富士通ウェブ・アクセシビリティ指針を一般公開し、日本におけるアクセシビリティ普及の先導を果たす。ウェブサイト向上による企業ブランドの向上を実践し、日経パソコン 企業サイトユーザビリティランキング2004年-2006年の3年連続1位を受賞。個人としても、2003年グッドデザイン賞コミュニケーションデザイン部門、(社)日本アドバタイザーズ協会 第4回Webクリエーション・アウォードWeb人賞を獲得。PMI認定PMP。現在、富士通グループ全体のWebサイト統括に従事。

PMBOKを活用した最先端ウェブディレクション

お二人の共著『Webプロジェクトマネジメント標準』(技術評論社)が発売されました。一言でいうと、どんな本ですか?

林: クリエイティブ業界は感性の世界で、やってみないとわからない、できあがってみないとわからないというリスクをはらんだまま来ている気がします。こうした不安定だったり、時に非効率的な流れが、クリエイティブ業界全体の閉塞感につながっていると危機感を持ち、システム開発のようなプロジェクト管理の手法をクリエイティブにも応用できないかと暗中模索してきました。

その結果、ロフトワークではプロジェクトマネジメントの実質的な国際標準とされるPMBOK(ピンボック)をベースにウェブ・プロジェクトの進め方を徹底的に見直し、大きな失敗を未然に防ぎ、クライアントに満足していただけるウェブディレクションの方法を構築してきました。そのPMBOKを活用したウェブディレクションのやり方を具体的にご紹介したのが、この『Webプロジェクトマネジメント標準』です。

本書の具体的な内容は?

林: 第1章「プロジェクトマネジメントがもたらすもの」では、PMBOKの基本的な考え方について、第2章「PMBOKに基づくセオリー」では、ウェブ・プロジェクトにおけるPMBOKの具体的な活用法について、第3章「プロジェクト・マネジャーの真のチャレンジ」では、プロジェクト・マネジャーの心得やリーダーシップについて書かれています。さらに第4章には、実際にプロジェクトで活用できる、議事録や管理表などのテンプレート集もつけました。

PMBOKは本来宇宙開発までも含むあらゆるプロジェクトを網羅した膨大な知識体系ですが、この本では予算300万〜600万円程度の小中規模のウェブ・プロジェクトについてのみ取り上げています。

PMBOKならクリエーターがクリエイティブに注力できる

高橋さんは、日本におけるPMBOKの先人の一人ですが、どんなきっかけでPMBOKと出合ったんですか?

高橋: ぼくは富士通で世界35カ国の自社サイトを管理していますが、実体験を通して、異文化コミュニケーションというものを実感していています。国ごとに基準や価値観がまったく違うんです。その中でプロジェクトを行なうのは、並大抵じゃないと肌で感じていました。かつウェブの仕事って、クリエイティブのデザインの方、プログラマー、SE、マーケティングの方とか、いろんな人が入って職種が違うため、価値観が異なる。なかなかプロジェクトがうまくいかないという壁に突き当たっては失敗してという繰り返しの中で、限界を感じていたのです。

2002年頃、富士通やIT業界全体でSI(システム構築)の商談に赤字プロジェクトが散見されるようになってきました。その中で全社的にプロジェクトの進め方を体系的に見直すことになり、PMBOKの導入が推進されました。そこでSIだけでなく、ウェブの方でも体系的な知識を修得することは非常にいいと思って、PMBOKを勉強しました。

日本では、システム商談の世界でSE(システムエンジニア)が主体に取り組んでいたのですが、ぼくはウェブサイトの管理者の立場としてしっかり勉強し、PMP資格も取得しました。実際にPMBOKに基づいてプロジェクトを進めると、納得性や客観性が生まれ、今までマネジメントが難しかった欧米の方々も納得してくれるようになりました。

本来システム業界のものだったPMBOKを、クリエイティブ業界に持ち込んだわけですね?

林: クリエイティブが感性だけの勝負というのは本当なのか?むしろ、よりクリエイティブになるための基礎フローがあるのではという思いがありました。そんなとき高橋さんと出会い、グローバルにサイトを管理しているにもかかわらず、PMBOKを通じてプロジェクトをうまくやっているということを聞いて、ロフトワークの社内勉強会で話してもらったのです。

高橋さんから実際のウェブ・プロジェクトの事例などを伺ってみると、PMBOKというものがそもそも自分たちが求めていたものだと分かりました。PMBOKでしっかりしたフレームワークを作れば、クリエーターがもっとクリエイティブに注力できるプロジェクトの進め方ができると確信しました。

講演会の大反響からはじまった書籍化

そんな取り組みが本になったきっかけは?

林: 昨年7月の講演会で、PMBOKに基づくウェブディレクションへの取り組みをお話したところ予想を超える評判で、あらためてもう一回やってくださいということになりました。そこで9月に、今度はロフトワークがやっていることに特化した形で講演したのです。

1時間の講演後、司会者の方が「もしこのことに特化した4〜5時間の勉強会があったら参加したい人?」と質問したら、会場中の人が手を上げてくれたのです。実際やってくださいという話になり、すごくうれしく思いましたが、私には会社があって物理的に無理だと思っていたときに、出版社の方から本にしませんかと声をかけていただきました。

みんながあんなに、PMBOKは自分たちのディレクションの参考になるかもしれない、あるいはレベルアップできるかもしれないと思ってくれているんだとしたら、ぜひともそれに取り組んでみたいなと、今回の書籍化の話をお受けしました。

書籍化にあたって、高橋さんに執筆を依頼したのは?

林: PMBOKとの出会いを作ってくれたのは高橋さんだし、ウェブ業界にPMBOKを持ってくるというのはまだまだ新しい取り組みなので、自分一人ではなくて、大先輩である高橋さんにも一緒にやってもらえるとうれしいし、やはり高橋さんを尊敬しているというのが一つ。

あと、高橋さんとは目指しているところがすごく近い。PMBOKを使って型にはめちゃえばいいというよりは、むしろしっかりと型を覚えて無駄なところを効率よくやって、本来やりたかったところに注力するためのものだというような、価値観が近いというのがありますね。

ゼロから作りあげたウェブディレクションの新スタンダード

執筆にあたってはどんなご苦労が?

高橋: PMBOKでは最初に「プロジェクト・チャーター」というプロジェクトの企画書みたいなものを書くんですが、今回それを最初にきちっとやりました。プロジェクトの原理原則をちゃんと書く。スケジュールが進んでくると、書籍の対象者は誰かとか最初に決めた大事なことが、けっこうぼやけちゃうんですよ。最初に決めたことを忘れてしまい、自分の中で都合良く勝手に咀嚼解釈してしまうことがままあります。それを、憲法を作ったからお前は違法だと引き戻す役割があるんです。けっこう何回か使わせてもらった気がします。嫌がられるくらいしつこくやったんですが、後になって、それがよかったと思います。

林: 私の場合は、参考になる本がまったくないんですよ。PMBOKの書籍自体もそんなに多くない上に、どちらかというとシステム管理をメインにしているものなので、参考になるのは基本的にPMBOKの本体しかないんです。ところがこれは、汎用的だしものすごく難しい。その中からウェブ用にどこをピックアップすればよいか、要はシステム開発とか宇宙開発まで使われる汎用知識体系なので、ウェブ用に必要なプロ知識を選んでくるのがまず難しいし、選んできたものをウェブ業界の人たちにわかりやすくもう一回解説しなおすというのが、ほぼゼロからの作業だったので、とてもたいへんでした。

高橋: ぼくが書いたのは、プロジェクト・マネジャーの心得です。コンピテンシー(行動特性)というものを書いています。ただ、プロジェクト・マネジャーのコンピテンシーというエリアは、さらに参考とする本が皆無でした。編集者の方からは、好きに書いていいと言われたんですが、ほんとうに最初は何を書いていいのやらぼんやりしていました。目次を書いても中味が書けなくて、1章ごと書いていって、やっとどんどん書けていく。「段階的詳細化」、つまり進めていくとより詳しくわかってくるというのが、PMBOKの特長の一つなんですが、今回それが如実に現れたという気がしました。書くたびに自分の頭の中が整理されていくわけです。

既存でやっているプロジェクトは、だいたい経験知があるから次のなにをするかが、わかったりするんだけど、書籍化はある意味はじめてのことだったので「段階的詳細化」を楽しめました。ぼくはプロジェクトをやったという実感がすごくありますね。

まず型をしっかり身に付け、次にクリエイティブを目指す

この本で一番伝えたかったことは?

林: 二つあって、一つはきちんとしたフレームワーク、いうなれば「型」を身に付けることの重要性を知ってほしいということです。
ウェブ・プロジェクトは今後さらに難しくなっていくと思います。「自己流」でプロジェクトに取り組んでしまうと、リスクが高まり、制作側もお客さまも不幸になってしまいます。そうならないためにも、世界標準であるPMBOKをうまく活用していただければと思います。

二つめは、PMBOKは型にはまった仕事をするためではなく、よりクリエイティブな仕事をするための手法だということです。クリエイティブを制限するものだという誤解はしないでほしいと思います。基礎動作をしっかり守ることは大切ですが、あくまでも目的に到達するための基本であり、同じものを繰り返し作ればいいというものではありません。

PMBOKをマスターする過程の中で、最初は型を覚えるために一生懸命になる時期もあると思います。しかし、その先は目的を達成するためにどれほどいい仕事ができるかを考える。そのようなクリエイティブの部分を忘れないでほしいのです。

アシスタントからリーダーまで全ウェブ制作者必読!

どんな方に読んでもらいたいですか?

高橋: プロジェクト・マネジャーは、武道と一緒で「心・技・体」が揃っているべきだと思います。技があっても、人格がダメとか、ふるまいがおかしいとか言ったらありえないと思います。今回それを書きたかったんですよ。だから実は半分以上精神論を書いていて、第3章は技術書でもビジネス書でもなく、ぼくの精神論を書いた哲学書になっているんですよ。やさしい哲学書と思ってください(笑)。

そういう意味で、読んで欲しいのは、どちらかと言えばリーダークラスの人です。部下を持っていて、部下に指導する立場、自分の態度を改めたい人。実が無いのに偉そうにするリーダーとか、ぼく嫌いなんですよ。更に成長したいという意欲をもつ人に読んで欲しいですね。

林: 私が担当した2章で想定しているのは、まさにウェブ制作の現場にいる人たちです。アシスタントレベルの人たちも含めて、ウェブ制作にかかわる方たち全般。2章に書いてあるのは、すごく具体的なことです。そういう具体例をきっかけに、それ以外のポイントでも、自分でやっていることを考えるきっかけになればいいな、ということで、各フェーズごとに時系列で、こんなことがある、こんな視点で考えたら?ということを15くらいの章にわけて設定してあります。自分のプロジェクトはどこに気をつけたらいいか、どこがおかしいんだろうかと考えるきっかけにしてほしいなと思います。

(第2回へつづく)


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