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トップ > 特集 > エンタープライズ情報アーキテクチャに基づいたウェブガバナンス - IAの視点で企業サイトのあるべき姿を語る(2)

インフォメーションアーキテクトのコンセント長谷川敦士氏とPMOのロフトワーク林千晶、IAの視点で企業サイトのあるべき姿を語る

執筆者

株式会社ロフトワーク
ウェブエキスパート編集部
  • ウェブエキスパート編集部は、「複雑な情報をわかりやすく伝えるための技術」として、とくにウェブデザインで重要な「情報アーキテクチャ」について探るため、株式会社コンセントで代表取締役社長を務める長谷川敦士氏をお招きし、ロフトワークの林 千晶との対談を企画しました。

2010/03/31

企業サイトはウェブガバナンスでブランディングやマーケティングとの整合を図ることが鍵

 企業を取り巻く市場は大変なスピードで変化をしていますが、一方で、企業のブランド戦略などはすぐには変えられません。ウェブガバナンスを円滑に進めていくには、動きのない部分と動きのある部分とを正しく理解してプロジェクトを進めていく必要があると思うのですが、どのように取り組めば良いとお考えでしょうか。

長谷川氏 企業サイトでのプロジェクトは、「エンタープライズ情報アーキテクチャ(EIA)」と呼ばれるフレームワークで検討を進めます。これは「トップダウン」と「ボトムアップ」の2つアプローチと、「ゲリラアプローチ」から構成されるものです。「トップダウン」のアプローチは全社で共通化する部分です。たとえば、すべてのページのグローバルナビゲーション上で企業ロゴを配置する、あるいはナビゲーションを統一する、といった領域は、トップダウンで決めるべき事項です。もうひとつが「ボトムアップ」のアプローチです。

製品を担当する事業部が複数存在するのであれば、各製品独自のマーケティング戦略を尊重し、個々のサービス効果や運用効率に合わせてサイト構成を個別に考える戦略をとることが合理的です。

これらの個別で最適化を行うのが「ボトムアップ」のアプローチです。ただし、ボトムアップの場合でも、たとえば表現は異なっていても同じ要素のナビゲーションは用意する、文言の用法の統一を図る、といったルールをトップダウンで策定する必要はあるかもしれません。つまり、何をトップダウンで決めて何をボトムアップで許すかが、その企業にとっての情報アーキテクチャ戦略、ひいてはウェブガバナンスといえます。また、このトップダウン、ボトムアップのルール以外に「ゲリラアプローチ」も考えられます。たとえばtwitterのような新しい動きやデジタルサイネージに企業としてどう対応すべきか、といった課題については、トップダウンやボトムアップでルールを決める前に、まずは小規模にゲリラ的な施策を許して臨機応変に試してみる、といった方針を持っておくことも一つの方法です。

 なるほどね、マーケティングやブランディングの方針やルールを明確に設定することが鍵ですね。とはいえ、日本のウェブ業界や、ソフトウェア業界も含めて、まだまだ、トップダウン的なウェーターフォール型の開発プロセスが主流で、意思決定や軌道修正がついていかない場合も多い。私の考えも長谷川さんの考え方に近くて、もっとアジャイルをきちんと取り入れることが、いろんな意味で本当に魅力的なサービスを作るには必要だと思っています。

ロフトワークでは企業のウェブサイトを制作するときにアジャイル的な手法を導入することがあります。先方の担当者とロフトワークのスタッフとでタスクフォースを組んで、これは捨てよう、これはやろう、と取捨選択しながら毎日のように細かい軌道修正を加えていくのですが、あらかじめ決めたマイルストーンだけは変えない。

つまり、決められたスケジュールのなかでできるだけいいものを作っていきたいという共通意識のなかで、機能を細分化して優先度の見直しを常に行うアジャイル的な進め方が、ひとつの解ではないかと考えているんです。

ただ、実際のところ企業ではプロダクトごとにブランドイメージが分かれ、それぞれに担当者がいる。そういった場合、トップダウンでデザインを統一してしまうことも可能ですが、ブランドイメージから外れたり、担当者の抵抗などでなかなか進まないのも現実ですよね?

長谷川 ええ。複数の事業ポートフォリオを抱えている企業は、予算や商品計画を各事業部に任せていることが多く、結果として企業全体のブランドより、個別事業のブランドを優先させていることが多くあります。しかし、いざウェブサイトを構築しようとするとき、企業全体でナビゲーションやページデザインを統一しようとしてしまうことがあります。こういったケースでは、企業全体で必ずしもなにもかも統一することがベストとは限らないのです。企業としてのブランドマーケティングをもう一度見直し、整合性の取れたウェブガバナンスを決める必要があるでしょう。
そういった土台があって、新しいテクノロジーや、新しい売り方、今だったらサイネージどう使うかというようなマーケティング手法を、ゲリラ的に試すことが可能になると思います。

ユーザーのことを考えるヒューマンセンタードデザインで品質を向上

 ところで「IA100:ユーザーエクスペリエンスデザインのための情報アーキテクチャ」のなかで、「使う人に合わせてデザインするアプローチ」という考え方として「人間中心設計(ヒューマンセンタードデザイン:HCD)」が紹介されています。ウェブサイトを構築する際には、必ずターゲットとなるユーザーを考えてデザインをすると思うのですが、それとは違うのでしょうか?

長谷川 ヒューマンセンタードデザインを端的にいうと、使いやすさを向上させるための恒常的な企業活動となります。林さんのおっしゃるように、ユーザーのことを考えることはデザイナーであれば誰でも考えることですし、ユーザーを理解する、要求事項を定義する、ソリューションを定義する、その効果を検証する、というPDCAサイクルを組織として実施していくことで、サービス品質やユーザビリティを向上させることができるという考え方ですので、基本的なところでは同じです。ただ、一度ユーザーを定義してしまえばおしまい、ではなくドキュメンテーションも含めてユーザーの立場になって考えることを組織活動として根付かせることが肝となります。

 そうですね、組織活動として、ユーザーの立場に立ってデザインや情報設計をし検証、改善を繰り返すことで品質は向上していくという考え方はぜひ取り組むべきですね。さて、ユーザーを把握する(実際に本当にユーザーを理解することは出来ないのですが)方法として、一般的にはユーザビリティテストという手法でユーザーの行動や性向を調べてデザイン改善に活用します。とはいえ、有償のユーザビリティテストというとコストもかかり、大掛りになりますので、たとえば社内の別部門の人や社外の友人に意見を訊くだけでも、制作側が気付かなかったところに気づけたりします。こういった気軽にできるテストも取り入れていくと、もっと組織的に根付くのかもしれないですね。

情報をきちんと設計するという考え方=ユーザーに愛情をもって接する

 IAからウェブガバナンスに至るまで、さまざまなお話をしてきましたが、情報をきちんと設計するという考え方はこれからのウェブ設計では避けては通れないと思っています。そういう意味で、ウェブを展開している企業側はどのような心構えをしておけば良いですか?

長谷川 企業の担当者がIAの考え方や細かいテクニカルなことまでも理解していただく必要はないのですが、IAを押さえておかないとユーザーがサイト内で迷ったり情報が増えすぎてしまうということが起こり得る、という点は認識しておくと良いと思います。また、企業として、ウェブで実現したいこと、あるいはお客様に伝えたい情報を、明確にイメージするということが大切です。

 私は仕事を進めるには「ラブ」が不可欠と考えています(笑)。この「IA100」という本の最後に大きく書かれている「IA=♥」は、情報をきちんと設計するという考え方=ユーザーに愛情をもって接することだと思います。今日のお話のなかでもユーザーに愛情をもって接しようという長谷川さんの考えがとても伝わってきました。
日本のウェブに関わるすべての方々のめにお互いに愛情あふれる、いいお仕事ができるように頑張りましょう。本日はどうもありがとうございました。


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